ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

それは子供の頃、お気に入りのおもちゃを取られた時の感情とよく似ているものだった。

すみれと生活を共にし、彼女のことを知れば知るほど、矛盾する想いに悩まされてばかり。

成長していくすみれが愛しくて、キスしたい衝動を抑え切れなかった。

いっしょにいると抱きしめたくなり、常にぬくもりを感じていたかった。

好きと言われて、喜んでいる自分がいた。

もしかしたらこれが、好きって感情なのだろうか。

すみれに告白されたこの日の夜は、ベッドに入ってもなかなか眠りに就くことができなかった。



「あ、謙信くんおはよう」

「……あぁ、おはよう」

次の日の朝。寝不足でけだるい身体をどうにかお越し部屋を出ると、すみれはいつものように、エプロンをつけてキッチンで朝食の準備をしていた。

「珈琲でいいかな？」

「悪い、頼む」

そしてまるで昨日の告白がなかったかのような普段通りの彼女に、戸惑いを隠せない。