ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
そうだ、大切なのは過去じゃない。今であり、未来だ。長い時間を共有していく中で、私が彼の気持ちを変えていけばいい。

精いっぱいの気持ちを伝えると、一弥くんはなぜか顔を歪めた。

「……一弥くん?」

彼の名前を呼ぶと、一弥くんは深く息を吐き、腹を括ったような目で私を射貫く。

「悪い、もう限界。……親父に口止めされてきたけど、黙ってらんねぇ」

「なに言って……」

すると彼は耳を疑うようなことを言った。


「あいつがお前と結婚を決めた理由は、同情以外なにものでもない。……じいちゃんがいなくなるかもしれないから、そんなお前を不憫に思って結婚を決めただけだ」

「――……え」

ちょっと待って、一弥くん今……なんて言った?

「やだ、一弥くんなに言ってるの? ……おじいちゃんがいなくなるとか」

渇いた笑い声が漏れ、声が震える。

だってそんな……。おじいちゃんがいなくなるだなんて、冗談にしてはあんまりだ。

私にとってたったひとりの家族。物心ついた頃からずっと育ててくれた大切な人。そんなおじいちゃんがいなくなるなんて――。

そんなわけない。……なのに一弥くんの表情は変わらず、焦りを覚える。
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