ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
どうして謙信くんが家に来たのか、どうして部屋に向かっているのか。……そして、おじいちゃんと話していたことが気になるのに、胸がいっぱいで聞けそうにない。彼の大きな背中を見ると余計に。


あっという間に私の部屋の前に着くと、謙信くんは足を止めた。

「さすがに女の子の部屋に俺から入るわけにはいかないから、すみれが先に入って」

「あ、うん……」

こういう優しくて気遣いができるところ、昔から変わっていない。

掴まれていた腕を離され、部屋の扉を開け謙信くんを部屋に招き入れた。

「どうぞ」

「おじゃまします」

クスッと笑みを零し、謙信くんは私の部屋の中に足を踏み入れた。


いつも部屋は綺麗に保っているけれど、心配になりキョロキョロと見回してしまう。散らかったりしていないよね?って。

けれど幸い特になにか出しっぱなしにしているものはなく、安堵する。


一通り部屋の中を見回した謙信くんが向かった先は、彼からもらったプレゼントが置いてある机。

それを手にすると私に差し出した。
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