ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「そっか。……すみれの部屋にあるの?」

「うん、そうだけど……」

すると謙信くんはにっこり笑った。


「じゃあ行こうか」

「えっ!?」

ギョッとする私の手を取り立ち上がった彼。


「じいさん、ちょっと待ってて。すみれに話してくるから。それから食事いただく。それと今後のこともそのときに」

今後のこと? ますます頭の中は混乱していく。

「わかった。すみれにしっかり話してこい」

「あぁ、わかってる。行こう、すみれ」


謙信くんに腕を引かれ、おじいちゃんを残して空き部屋を後にする。

「すみれの部屋、昔と変わっていない?」

「うん、変わっていないけど……」

「了解」


前を向いたままそう言うと、謙信くんは真っ直ぐ私の部屋へと歩を進める。

謙信くんが家に来るのは本当に久しぶりだった。いつぶりだろうか。思い出せないほど月日が経っているのはたしか。

それなのに謙信くんは覚えているんだ、私の部屋がどこにあるのかを。

そう思うと胸の奥から、じんわりとあたたかいものが溢れ出す。
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