ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
先に歩き出した一弥くん。半歩後ろを歩き向かった先は集中治療室。

ガラス窓一枚越しに見るおじいちゃんは、まだ目を覚ましていない。

目を覚まして容態が安定したら面会できるって聞いたけれど……心配で帰れそうにない。

歳も歳だし、順調に回復してくれるかは本人次第だと聞き、不安が膨れた。

私、謙信くんとの生活にいっぱいいっぱいで、おじいちゃんに連絡することも会いに行くこともしなかった。

勝手におじいちゃんはまだ元気で、いつまでも長生きしてきれると思っていたからかも。


だから連絡してくるな、謙信くんとの生活を頑張れって言葉を鵜呑みにして、おじいちゃんのことなにも考えていなかった。

きっとお弟子さんの家で元気に過ごしているんだろうって。

ずっといっしょに暮らしてきた私が、なにやっているんだろう。

おじいちゃんの病気に気づかず、離れて暮らしている間、心配もせずに呑気に考えていて。

こんな自分が嫌になる。

ガラス窓に手をつき、おじいちゃんを見つめていると、隣に立つ一弥くんがボソッと言った。

「大丈夫か?」

その声に隣を見れば、心配げに私を見る彼と視線がかち合う。
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