ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「好き」って伝えた途端、謙信くんの身体は少しだけ強張り、ゆっくりと私の目元に触れていた手が離れていく。

そして向けられたのは私の胸を打ち抜くような、力強い眼差しだった。


「好きって気持ちを教えてくれたすみれのこと、生涯かけて幸せにしたい。……これから先もずっと守ってやりたいと思うし、そばで支えてほしい。……すみれ、幼なじみじゃなくて恋人からはじめてくれないか? もっと俺のことを知ってほしいし、お前のこともたくさん知りたいんだ」

せっかく謙信くんに拭ってもらったのに、また涙が零れ落ちた。

「は、い。……はい!」

それでもどうにか返事をすると、謙信くんは嬉しそうに顔を綻ばせると、優しく私を包み込んだ。

彼のぬくもりに愛しさがこみ上げ、腕を伸ばした。

「私ももっと、謙信くんのことを知りたい。……私のことも知ってほしい」

「あぁ」

大きな背中を必死に掴んだ。

「謙信くんが好き。大好き。……私、ずっと謙信くんの彼女になりたかったっ」

初めて謙信くんが彼女といっしょにいるところを見た時から、そう思っていた。

謙信くんの彼女になりたい。隣立って歩きたいって。
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