ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
叔父さんが桐ケ谷流を継ぐとわかった日から、一弥くんはずっと後継ぎとして頑張ってきた。

それは今も変わらないんだ。

「俺も頑張らないと。……父さんから受け継ぐ会社を大きくできるように」

飛行機が小さく見えなくなると、彼はそっと私の手を握り聞いてきた。

「その時は、すみれがそばで支えてくれる?」と――。

もちろん私は笑顔で答えた。「うん、必ず」って。




婚約を解消し恋人同士になった私たちは、同棲も解消した。

おじいちゃんは手術から三ヶ月後に無事退院し、再びあの家でふたりでの生活をスタートさせた。


訪問看護などを利用し助けてもらいながら、おじいちゃんは自宅での生活にも慣れてきて、今では昔のような生活を送ることができている。

少しずつ叔父さんに任せていた華道教室にも顔を見せ、指導に当たっている。

恋人同士になった私たちに、おじいちゃんは「それがいい」と一言だけ。

今も私の幸せを誰よりも願ってくれている。
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