ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
けれど私は決してお高くとまっているわけないし、部長とだって……!

前方を歩く先輩たちは笑い声をあげている。本当は違うのに。

それに私のせいで部長まで悪く言われてしまった。

私と部長が昼休み話しているところを、誰かに見られていたってことだよね? だから先輩たちも知っていたんだ。

もしかしたら先輩たち以外にも、部長のことを悪く言っている人がいるのかも。


そう思うと部長に申し訳なくて、昔の記憶が蘇る。やっぱり私……人と話すのが怖い。部長と話せるようになって楽しくて嬉しくて、忘れていた。昔経験した忘れたい想いを。

やっぱり私はひとりでいるべきなのかも。嫌な思いをすることもないし、誰かに迷惑をかけることもないのだから。


この日の昼休み、私はお弁当を持って屋上に向かった。これ以上に部長に迷惑をかけないように。


けれどこれまでの一週間、部長と共に過ごした昼休みがとても楽しくて、久し振りにひとりで食べていると、寂しくてしかたない。

「なんか美味しくないな……」

味付けはばっちりなはずなのに、なぜか今日のお弁当は美味しいと感じない。
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