ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

最悪。仕事だけは完璧にやろうと決めていたのに、計算ミスしちゃうなんて。

不甲斐ない自分に嫌気が差し、頭を抱え込む。とにかく修正しないと。書類の修正に取りかかろうとした時、不意に叩かれた肩。

驚きすぐに振り返ると、私の肩を叩いたのは綾瀬さんだった。彼女は眉を下げ私を手招きした。

「ちょっといい？　休憩しない？」

「え……でも」

さっき修正を頼まれたばかりなのに。戸惑う私に彼女は続けた。

「息抜きしよう。なにか奢らせて」

「え……あの、綾瀬さん!?」

綾瀬さんは強引に私の腕を引くと、そのままオフィスを後にしていく。


こんな強引な彼女は初めてで、困るのに腕を引かれるがままついていくしかない私。向かった先は自販機が設置されている休憩スペースだった。

「桐ケ谷さん、レモンティーでいい？」

「あ、はい。すみません」

手早く綾瀬さんはレモンティーをふたつ購入すると、ひとつを私に差し出し近くの椅子に腰かけた。そして私にも座るよう促してくる。