君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
男子生徒が依然としてそう反論した。
しかし、李人は力強い目で男子達を見つめた。
『ゆうはは、およげるよ。だけど、まんがいち、そうじゃなかったら』
『ぼくが、ゆうはをまもる』
………だから、溺れることはないんだ。
そう、李人は言った。
その言葉の力強さに男子生徒達はもちろん、優葉も言葉を失った。
その後、優葉は無事に泳げるようになった。
そして李人の言葉は、優葉の心奥深くに甘い音を残した。
その頃からだった。
それまで、従兄弟(いとこ)として当たり前のようにずっと傍で、仲良くしていた李人を、優葉が男性として意識しだしたのは。
そしてーーー、優葉は李人に恋をした。
いつも優葉の傍にいて、1番に支えてくれる李人。
従兄弟なので、絶対に離れる訳がない。 幼い優葉はそう信じて疑わなかった。
ーーーしかし、今、李人は優葉とは遠い場所にいる。
優葉の手の届かない遥か遠くに。
そして、それは優葉も望んだことだった。
"ぼくが、ゆうはをまもる"
………しかし、今でもこの甘い言葉を思い出すと、優葉の胸は熱を帯びる。
(でも絶対………、この想いは叶わない)
そのため、今日も想いにフタをする。それが開かないよう、厳重に鎖も付ける。
しかし、今日もカタカタと音を立てながら………それは開きそうになっている。
しかし、優葉は目を背け続けるーーー。