君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

『………俺は、教師になりたい。 初めてできたこの夢を俺は、どうしても譲りたくない。 

条件があるなら、何でも引き受ける。だから………お願いだ。 俺を、教師にならさせてくれ』

そう言い、和泉は頭を下げた。

ーーーこんなことは、初めてだった。

和泉は義家と穂奈美の記憶上、二人の言ったこと、しろと命じたことに反抗、激昂したことは何度もあった。 

しかし、こんな風に何かを望み、ましてや頭を下げるなどはけして無かったのだ。 

その、異様ともいえる光景に二人は更に息を呑んだ。

しかし、その"異様"という言葉に対し義家は背筋がゾクリとした。

(………異様、と思えるほど、和泉は自分の望みを言ってはいなかったということか………?)

そこで、義家は初めて、自分が今まで和泉や櫂にしてきた仕打ちが、いかに彼らの心の奥底を閉じ込めてきたかに気がついた。 


< 392 / 660 >

この作品をシェア

pagetop