君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
『………父さん。 もし俺があんたの跡を継いだとしても、そこには何も生まれないよ。
俺には、政治家になりたいっていう動機がないから。
ただ息子だっていうだけで祭り上げられた政治家なんて、きっと誰も支持しない。
けれど、有華さんは違う』
『和泉………』
『有華さんは………、櫂兄さんみたいに政治家になるということに対して、きちんと動機をもってる。
そして、女性だからきっと、有華さんを次の後継者として発表すれば、今までに無かった沢山の支持層を取り込めるのも間違いない。
俺が政治家になるより、何倍も良いはずだよ。 ………けれど、それよりも』
そう言うと、和泉は真摯な眼差しを義家と穂奈美に向けた。
今までにないほどの和泉のそれに、二人は思わず息を呑み、目を見開く。