君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー
『穂奈美。 お前は、何も気が付かなかったか? ………和泉が、先ほど教師になるという望みの異様さにだ。
それほど、私たちの息子は………何も願ってこなかったんだろう。 政治家になる、という私たちのひいたレールの下にいたからな』
『あなた、それは………』
その言葉の先は、穂奈美でさえ紡げなかった。そんな妻を見、義家は一息つく。
『………和泉』
そして、不意に和泉と目を合わせた。
『………何?』
『確かに、お前の言う通りだ。 有華を次期、後継者として正式に発表すれば私の評価は上がるだろう。
そして………和泉。お前も、初めて言ったな。自分の望みを。
………良いだろう。 許してやる。 ただし、 中途半端に終わらせるなよ。 やるからには全力でやりなさい』
『………!』
和泉は、そう言った義家をまた目を大きくさせ、見つめた。
そしてーーー
『ありがとうございます………。 父さん、母さん』