君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー

「ちょうど花火大会もあるし、行ってきなよ」

そう言って、綾子が指をさしたのはR町花火大会のポスターだった。 

………李人との思い出しかない場所。

李人しか思い出せない場所ーーー………。 

ズキン、と再び痛む胸にもうんざりしてくる。

(そんな………痛いばかりの思い出は消したいよ)

優葉はそう決意し、和泉のほうを向いた。

「和泉、一緒に花火大会とリゾートパレスに行こう」

「え?」

「ーーー和泉と一緒に行きたい。 ………私は、和泉との思い出しかいらない」

そう切なげに顔を歪めると、優葉は和泉の手を握った。

「優葉………」

「………お願い、和泉。 楽しい思い出にしたいの。花火大会は私にとっていつもそういうものだったから」

そう言うと、優葉はもう一度和泉を真摯な目で見つめる。

そんな目で懇願されては、和泉が断れるはずがなかった。

「………ほんっと」

「………え?」

「ズルイ女だね? アンタって」








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