君は、近くて遠い。ーイエナイ三角関係ー


「嘘!? あの橘 李人!?」

「本当だよ! ロケ地拡散されてるし! 写真もあるし! えっと、スマホ、スマホ」

「ねぇ」

「え!? せ、瀬名君っ!?」

「………その写真見せてくれない?」

和泉は、気付けばそう頼んでいた。

ーーー突然、 橘 李人と名乗る男が優葉を和泉の前から連れ去ったあの日。

和泉は、明らかに李人が敵意を剥き出しにしていた事と、
何より優葉があまりにも親しげに李人の名前を呼ぶ………その美しく澄んだ声が頭から離れなかった。

なので和泉は帰宅後、李人の名前をネット検索した。

すると、最初見たのはその名前と肩書き、そして多くの李人の写真だった。

『橘 李人。 ーーー俳優』

(へぇ。 芸能人サマってわけ)

和泉は鼻で笑うと、下に画面をスクロールした。思った以上に莫大に李人の情報はヒットした。

(あの時は、帽子を被り眼鏡をかけていたから写真とは少し印象が違うが………間違いなくこの男だ。けど、コイツそんなに有名なのか? )

そう思いながら和泉は、最初にヒットしたインターネット百科事典の橘 李人のページをスマートフォンでタッチした。


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