とある真夏日に
とある真夏日に

白のワイシャツに良く映える、日に焼けた腕。
今も草野球をしているからか、逞しい筋肉だ。
この男の好きなところの一つで、つい見惚れてしまう。

「何?」

視線に気づいた彼が怪訝な顔を向けた。
あたしは慌てて逸らし、意味もなく足下を見る。


「別に?今日も暑いよねー」

日陰にいるとはいえ、さすが真夏日。全くもって涼しくない。
このバス停にさっき着いたばかりなのに、もう汗が滲んでくる。

「あと何件だっけ?挨拶回り」
「次で最後~」
「っよっしゃ!なぁ、終わったらかき氷食って帰ろうぜ」
「え?あたしまだ会社に戻ってやることあるんですけど?」
「いや、俺もだって。つか一緒だろーが。美味いとこ見つけたんだよ」

体育会系の顔立ちしていて、大のデザート好きな彼。
しかも本当に幸せそうに食べるから、ギャップ萌えってこういうことなんだろうなぁって初めて思ったほどだ。

チームを組むようになって、同期で気になっていた彼のことがより分かってきた。
それは同時に、好きが加速していき、恋に育っていった。


ねぇ、あたしのことどう思う?
好きって伝えたら、どう思う?
ただの同僚だと思う?


気になりだしたら相手の反応ばっかり考える。それもマイナスばっかり。
29歳って恋にこんなに臆病になるものかしら。

「いや?人それぞれだろ?」
「へっ?!!」
「だから、かき氷のトッピングの話。抹茶あずきに白玉が定番だけど、案外、桃とかでもいけるんじゃないかって・・・ってか聞いてた?俺の話」

すいません、聞いてませんでした。
ちょっと自分の内側にいました。
てか、考えごとが読まれたと焦ったじゃないっ。
てか、かき氷の話は続いてたんかい。そして行くことになってるんかい。
決定事項を覆す気力はもうなく、あたしの口も何となくイチゴ味になってきた。

「かき氷行くなら体力温存しとかなきゃ」
空いてるベンチに腰掛けた。気持ちちょっとだけ休まる。
「暑くて疲れたよな。次でラストだから、もうちょい踏ん張れ」
「うん・・・」
「もたれていいぞ」
「え?」
「楽かなとおもったけど、逆に暑いか」
「汗かいてるよあたし」
「俺もだし。つか、かかないほうがおかしいだろ。まだバス来ねーしちょっと休んどけ」
「・・・じゃお言葉に甘えて」

自分でも驚くくらい、素直に体を預けた。
服越しに触れる彼の熱は、嫌じゃない。むしろ心地よくて落ち着く。


こんな真夏日に行く挨拶回りも悪くないかも。
意外と現金な自分に苦笑してしまう。


この後の彼とかき氷を思い浮かべながら、あたしはそっと瞼を閉じた。


*終*
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