ミントブルーの純情
◇
「みーつ、お風呂出たよー」
「ジャンプ読んでるから待って」
「私が読むからキミは風呂へ行きなさい」
「読みたいだけじゃねえか」
今日も変わらず、お風呂から出た後みつの部屋へ向かった。ベットに腰掛けると、ジャンプから目を離さないみつの後頭部がよく見える。
月曜日は毎週これ。ジャンプの争奪戦はやめられない。
「……ねーみつ」
「つーかさ」
私の声を遮ってみつの声がかぶる。私はベットの上、みつはベットにもたれかかってジャンプを読む。これが定位置。
「何?」
「……いい奴いた?」
「はあ?」
「バスケ部。好みの男、いた?」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。
『勧められる方の気持ちも味わってみろ』って。みつが言っていたのはこのことか。
あまりに唐突に聞くからわからなかった。……それに、みつが私に他の男子を勧めて来ることなんてまずないし。色々、なんだかモヤモヤする。
「……別に、わかんない。関わってないし、そんなに」
「ふーん。じゃあまた連れてきてやるよ」
「何それ、みつってば変なの。今までそんなこと言わなかったのに」
「何? 弟から男紹介されるの嫌なの?」
「だから、なんでイキナリって言ってるの」
「……伊藤よりはマシだろ」
ドクン、と心臓がひとつ大きく鳴った。
突然出てきたその名前に驚いたのと、私と伊藤くんが連絡を取っていることがみつに全部バレてるみたいで恥ずかしくなった。
「……知ってるの?」
「何? より戻したの?」
「いや、それはあり得ないよ」
「ふうん、でもLINE、してんだろ」
全部見透かしてるみたいに、みつが言う。
こっちを向かないのも、少しだけむきになってるその口調も、みつのくせに、意味わからないよ。どうしてそんなに、みつはいつも自分の気持ちに正直なんだろう。
どうして、何も考えないで、自分の気持ちを大事にできるんだろう。
「……それなら、みつだって」
「は?」
「みつだって、ユカリちゃんとか、お似合いじゃん。あれだけ好意向けられてて、気づいてないわけないでしょ? ……ほんとは、まんざらでもないくせに」