ミントブルーの純情
みつが、ゆっくりとこっちへ振り返る。
鋭い目線と眉間に寄った皺。ベットの下から見上げるその瞳には、真っ直ぐわたしが写った。
……けれど、次の瞬間それはすぐに逸らされた。左に落ちたみつの視線と、綺麗な形をした横顔が三角形をつくってわたしに跳ね返ってくる。
「……おまえっていつもそうだよな」
「いつもそう、って何」
「……いつも。……余裕で、簡単に俺のことすり抜けてく。あおって、いつもそうだよ」
「……なに、それ」
「俺がユカリと付き合ったら満足なわけ?」
「そんなこと、言ってないけど…」
「なあ、あお」
左へ落ちたみつの視線が、こちらへと戻ってくる。下から見上げられる形になっているからか、いつもより小さく見えるみつが少しだけ幼く見えた。
もしかしたら、みつが泣きそうな顔を、していたからかもしれない。
「俺はいつも、嫉妬してるよ。……いろんなものに、いろんな人に、……妬きすぎて狂いそうだ」
ふ、と。みつの口角が緩んだ。目は一切笑ってないっていうのに。
「……あおにはわかんねえよな、俺のこのバカみてえな気持ち」
軽く視線を逸らしてから。みつが立ち上がる動作を、まるでスローモーションでも見ているみたいにぼうっと眺める。
ズキズキと胸が痛むのは何故だろう。部屋を出て行くみつの背中に触れたいと思うのは何故だろう。……私だって、という言葉を飲み込んだのは何故だろう。
「……風呂行ってくる」
そう言って扉を閉めたみつの背中が、じわりと私の胸に染み付いて行く。
何故だろう、なんて。
わかってるくせにわからないフリをするの、わたし本当に、ズルイね。
ねえだけど、みつ。
きみは自分の気持ちに真っ直ぐすぎるよ。私にとって、正直に、純粋に、自分の気持ちをさらけ出すのはとても、……苦しいことだよ。
だから、ごめんね。
いろんなことに見えないフリをする私をどうか、赦してほしい。