ミントブルーの純情


かじりついたピザトーストからボロボロとパンくずがこぼれ落ちた。味は好きだけれど食べるのが難しい。これは大きな問題点だと思う。


「……私は、いないよ」

「あら、そう? でも、あおちゃんの方が今まで恋愛してきたじゃない」

「うーん、そうだけど……恋愛、だったのかなあ」


中学生の時、一度だけ彼氏がいたことがある。それは、周りの子よりもちょっとだけ早かったと思う。すぐに別れてしまったけれど。

そのあと、高校一年生の秋、伊藤くんと付き合った。告白されてなんとなく、だって別に嫌いじゃなかったから。そのことは、お義母さんも知っている。

好きか嫌いかと聞かれれば、好き。

いい人だと思う。中学の時に一瞬付き合っていた人も、伊藤くんも、優しかったし一緒にいて楽しかった。きっと私のことを好きでいてくれていた。

でも、私が同じだけの想いを返せていたのかと聞かれたら、素直に頷けない。

想いの重さが量れたらいいのに。そうしたら私たちは、何も考えないで人を好きになれるのにな。胸を張って、好きだって言えるのにな。


目に見えないから、とても難しい。


「あおちゃんは難しく考えすぎなのかもしれないね」

「え……?」

「ふふ、若い時って周りが見えなくなって突っ走っちゃう人の方が多いのに、あおちゃんは大人びてるのね。周りの目とか、評価とか、気にしちゃうタイプでしょ」

「大人びてなんかないよ、だって、当たり前のことを、考えてるだけで……」

「ねえ、あおちゃん、いい物あげるわ」


ふふ、と笑ってお義母さんが立ち上がる。

その隙に時計を確認すると、そろそろ家を出ないといけない時間が近づいていた。でも、なんだかこのまま休んでしまってもいい気がする。インフルエンザ以外で学校を休んだことなんてないけれど。



「あったあった、これ。今のあおちゃんにきっと似合う」


< 37 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop