私と恋をはじめませんか
「小春ちゃん甘いわよ。もっと強く言っていいんだからね!」と、私の代わりに結構きつい言葉を有村さんに浴びせていた。

「ホントに大丈夫ですから。私のせいでふたりの仲が悪くなるのは嫌です」

私の言葉に、芽衣さんがキョトンとした表情を見せた。

「小春ちゃん、そんなこと気にしてたの? 大丈夫よ」

「え?」

「確かにあの一件に関しては、私は有村が悪いと思ってる。でも、それで私が有村自身のことを嫌いになるわけじゃないからね。小春ちゃんが気にするようなことは何もないから安心して」

ニッコリ笑った芽衣さんを見て、私もホッとした笑顔を向けた。

「そうですよね。ラブラブのふたりがこんなことくらいでどうにかなるなんてこと、ないですよね」

ちょっとだけ意地悪く言うと、少しだけ芽衣さんの頬が赤くなった。

「小春ちゃんってば。年上をからかうもんじゃないわよ」

「えへ。ごめんなさい」

「まぁ、避けられるのはあまりいい気分じゃないだろうけど、時間が経てばまた変わることもあるだろうから、月並みなことしか言えないけど、頑張って」

「はい。今日は同期の飲み会もあるので、それを楽しみに午後から頑張ります」

笑顔でそう言うと、芽衣さんも笑顔を見せてくれた。




「じゃあ、久々の同期集合にかんぱーい!」

「かんぱーい!」

会社の駅近くの居酒屋で、ジョッキのあたる音が響く。

「やっと今週も終わった~」

私の左横で枝豆を美味しそうに口にしながら左手を上げているのが、商品開発部のきょんちゃん。

同期五人の中で一番の『米菓愛』を自負するきょんちゃんの愛はものすごくて、面接でのきょんちゃんの自己アピールの、今後の商品開発についてのプレゼンはとても素晴らしかったらしい。

なんてったって、入社式の後に、商品開発部の部長さんがきょんちゃんの元にやってきて、「絶対にうちに指名するからね!」と言うくらいの出来なのだから。

「どうした? なんか元気なくない?」

右横から私の顔をのぞきこむのは、システム部の原くん。

三つ年上の奥さまのことが大好きで、卒業を待たずして学生結婚をしている原くんは、そのせいかとっても落ち着きがあって、同じ二十二歳なのに、私たちの中では『兄さん』と愛情込めて呼ばれている。
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