クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
有馬さんは残念そうに顔を曇らせながらも、数枚撮った写真には満足したようで、その写真を手元で確かめ。


「そのうち見せてやろう」


そう微笑んで、携帯をポケットにしまった。

膝を抱えて、そんな彼を見ながら、"そのうち"ってなんですか、と心の中で問いかけた。私たちがどうなると、その"そのうち"がやってくるんですか。

私、想像してもいいですか。

「いただきます」と言って手をつけた有馬さんは、あっという間にお弁当箱をスカスカにしてしまい、のんびりおにぎりをかじっていた私を唖然とさせた。

食べる量もすごいけど、スピードがすごい。今はしずしずと食べる律己くんも、やがてはこんなふうになるんだろうか。


「うまいです」

「そうですか、よかった」

「唐揚げ、本物だ。早起きしたんじゃないですか」

「そうでもないですよ、昨日のうちに下ごしらえしておいたので」


本物ってなにかと思った。冷凍じゃないって意味か。

あぐらをかいた有馬さんは、近くで遊んでいる三人家族を眺めながら、「ふうん」と口を動かした。彼の服装は気負いのない、いつも通りのジーンズ。Tシャツにコットンシャツを羽織って、腕をまくり上げている。

転んで芝にまみれた男の子を、お母さんらしき女性がボールごと抱き上げた。けたけた笑う楽しげな声が、風に運ばれて届く。


「富永さんと、どんなお話してるんですか」

「え?」

「この間、声をかけられてたでしょう」


渡した紙おしぼりで手を拭きながら、「ああ」と有馬さんがうなずいた。


「父親たちで、フットサルとかバレーとかやるチームがあるらしくて。そこに参加しませんかって。みんな子連れで来てるしって」

「いいじゃないですか!」


保育園の子たちは、親が忙しいため、幼稚園の子に比べると横の繋がりが薄い。そういう場所で律己くんも、いろんな友達を作ってくれたら嬉しい。

と思ったのだけど、有馬さんは「そうなんですけど」とピックでおかずを物色しながら、あまり乗り気じゃなさそうだ。


「人付き合いは面倒ですか?」

「面倒っていうか。要するに俺、結婚してないじゃないですか」


あ…。
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