クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「有馬さん、あなたの、律己くんと離れたくないっていう思いは、どうなんですか」
「関係ないって言ってるでしょう。それにそれは向こうも同じですよ」
「意気地なし!」
思わず力いっぱい突き飛ばすと、彼がドアに肩を、窓ガラスに頭をぶつけ、「いて!」と声をあげた。恨めしげな視線を送ってくる。
「ああ…?」
「欲しいって言うのが怖いんでしょう。欲しがって、選んでもらえないのが怖いんでしょう。欲しがるのもそもそも、嫌なんでしょう」
「なんだって?」
「みっともないって思ってるんでしょう。安斉さんみたいに、必死にすがるなんてごめんだって、かっこつけてるんでしょう。そういうの、意気地なしって言うんですよ!」
有馬さんの目つきがいよいよ険しくなった。
「保育士ってのはみんなそんな偉そうなのかよ。教育者ぶりやがって」
「残念ながら私は幼稚園教諭の免許も持ってます。お望みなら文科省が認定した"教育機関"の教師にもなってみせますよ」
「勝手に人の心を代弁するなって言ってるんだよ!」
「だったら自分で言いなさいよ!」
私はもう助手席に膝立ちになり、運転席のほうへ身を乗り出していた。わからずやの彼の胸倉を掴む。掴んで揺する。
「どっちが律己くんと一緒にいたいか、安斉さんと競ったらどうですか! 三人の話でしょう? なのにどうして自分の気持ちだけ無視するの? 置いてっちゃうの?」
「気持ちとかそういうの持ち出すと、まとまる考えもまとまらなくなるんで、やめてもらっていいですか」
「ああそうですか。お聞きしますけど、じゃあ有馬さんは律己くんの"幸せ"をなにで測るつもりなんです? お金? なにかの数値?」
「その答えが出ないから迷ってるんでしょうが」
「気持ちを無理やり無視するから答えが出ないのよ!」
これで一周した。
次の応酬からは二周目。そこに踏み入っても延々決着がつかないのがわかるんだろう、有馬さんは無言で、反抗的な目だけをこちらに向けている。
負けるもんかと思った。
意地っ張り。意気地なし。見栄っ張りの臆病者。
口に出してぶつけてやりたい言葉を、奥歯で噛みしめる。
ぎりぎりと中央で押し合うような視線を、ふっと緩めたのは、有馬さんのほうだった。その目が突然、なにかに突き動かされるように揺れた。
「関係ないって言ってるでしょう。それにそれは向こうも同じですよ」
「意気地なし!」
思わず力いっぱい突き飛ばすと、彼がドアに肩を、窓ガラスに頭をぶつけ、「いて!」と声をあげた。恨めしげな視線を送ってくる。
「ああ…?」
「欲しいって言うのが怖いんでしょう。欲しがって、選んでもらえないのが怖いんでしょう。欲しがるのもそもそも、嫌なんでしょう」
「なんだって?」
「みっともないって思ってるんでしょう。安斉さんみたいに、必死にすがるなんてごめんだって、かっこつけてるんでしょう。そういうの、意気地なしって言うんですよ!」
有馬さんの目つきがいよいよ険しくなった。
「保育士ってのはみんなそんな偉そうなのかよ。教育者ぶりやがって」
「残念ながら私は幼稚園教諭の免許も持ってます。お望みなら文科省が認定した"教育機関"の教師にもなってみせますよ」
「勝手に人の心を代弁するなって言ってるんだよ!」
「だったら自分で言いなさいよ!」
私はもう助手席に膝立ちになり、運転席のほうへ身を乗り出していた。わからずやの彼の胸倉を掴む。掴んで揺する。
「どっちが律己くんと一緒にいたいか、安斉さんと競ったらどうですか! 三人の話でしょう? なのにどうして自分の気持ちだけ無視するの? 置いてっちゃうの?」
「気持ちとかそういうの持ち出すと、まとまる考えもまとまらなくなるんで、やめてもらっていいですか」
「ああそうですか。お聞きしますけど、じゃあ有馬さんは律己くんの"幸せ"をなにで測るつもりなんです? お金? なにかの数値?」
「その答えが出ないから迷ってるんでしょうが」
「気持ちを無理やり無視するから答えが出ないのよ!」
これで一周した。
次の応酬からは二周目。そこに踏み入っても延々決着がつかないのがわかるんだろう、有馬さんは無言で、反抗的な目だけをこちらに向けている。
負けるもんかと思った。
意地っ張り。意気地なし。見栄っ張りの臆病者。
口に出してぶつけてやりたい言葉を、奥歯で噛みしめる。
ぎりぎりと中央で押し合うような視線を、ふっと緩めたのは、有馬さんのほうだった。その目が突然、なにかに突き動かされるように揺れた。