クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
視線から隠すように両手で顔を覆った。確かに滲んできている涙を、ぐっと飲み込む。


「…私、無力だなあって思ったんです」


有馬さんを助けたいんですけど。

なにか力になりたいんですけど、律己くんを預かるくらいしかできなくて、預かる中ですら、知らないうちに有馬さんを追い詰めていた可能性に無頓着で。

私にできることなんて、つまりなにもないんだなあって、思ったんです。


「そんなことないですよ」

「いいんです、私…」

「そんなことないです」


急にきっぱりと言われ、私は驚いた。

彼の方を見ると、真剣な顔と目が合って、その顔がすぐ、ちょっと自分の口調にびっくりしたような、気恥ずかしそうな表情に変わる。


「有馬さん…」

「ないですよ、だって」


有馬さんはジーンズのポケットに両手を入れて、壁に背中をもたれさせて、投げ出した自分の脚の先を見た。そうしていると、高校生みたい。


「だって今の話聞いて、じゃあ土曜、保育園に行ったらエリカ先生がいるんだなって思っただけで」


困ったような、ちょっとふくれたような顔で。


「気が楽になってる自分がいますもん」


ぽつんと彼はつぶやいた。

私は戸惑い、うろたえ、でも嬉しくて、それを伝えようとしたんだけれどとりあえず狼狽の方が大きくて、だいぶ長い沈黙を作ってしまった後、「そうですか」としょうもない返事をした。


「ちょっと、子供がひとりでいるわよ、親は!?」


背後から聞こえた声に、お互いはっとした。
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