クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
私の中で、なにかがそのとき、弾けた気がした。

ああ、そうなんだ。やっぱりそうなんだ。

母の中で私は成功体験として片づけられていて、彼女は自分の送った人生に満足している。そして同じ道を娘にも辿らせるのが正しいことと信じている。


「こういう人たちって、どんなことを考えているんだろうと思って。働いている母親というものは、みんなこうなんだろうかって、疑問が湧いて。この世界に飛び込もうと思ったんです」


正解を見つけてどうしたかったわけでもない。

ただ、自分の目で確かめないと気が済まなかったのだ。二十年以上も積み上がった、たったひとつの疑問。

"あなたたちは、なにが一番大事なの?"

この答えがこの世界にきっとある。そう思ったらいてもたってもいられず、飛び込んでいた。


「で、ありました?」

「え?」

「答え」


有馬さんが、興味深そうな目でこちらを見ている。

私はひざを抱え直し、テーブルの隅で低く唸っている扇風機の回転する羽根を眺めた。


「まだだと思います。本当に人それぞれで。仕事に対する姿勢も子供に対する姿勢も、みんな違って…」


日々があまりに慌ただしくて、目的すらも気づけば忘れていた。


「親子って、なんなんでしょうね」


有馬さんがぽつんと呟いた。

両ひざを立てて、そこに載せた腕の先を、軽く組み合わせている。


「なんかこう、不思議ですよね。たとえば好きな相手がいて、一緒になって、その結果子供ができる。そこまでは、ふたりの話なんですよね」


無意識になにかを数えているみたいに、人差し指と中指を"二"の形に立てて、そこを見つめながら話す。
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