クールな彼のワケあり子育て事情~新米パパは甘々な愛妻家でした~
「子供が赤ん坊のうちは、やっぱりふたりの話な気がします。大事な人との間に大事なものがもうひとつできたって感じで。でも子供に自我が表れてくると、急に、親と子、っていう人間関係の話になる」
親指が加わり、"二"が"三"になった。
「有馬さんも、そんな感じでした?」
「俺は…」
彼が手よりも先の、どことも言えない場所に視線を落とした。だいぶためらってから、「わかりません」と小さく答える。
「でも、たとえば子供の…律己の手先が器用なのを知ったとき、あれの母親の血だと思いました。嬉しくなりましたし、誇らしいと思いました。そういう気持ちは、少なからず親ならあると思うんです」
「それはわかりますが、限度ってものが」
「もちろんです。先生のお母さんの、先生への関わり方は、俺もきっとやられたら傷つく。反面、身につまされます。子供が、親から産まれていて、なにかしら継承してるっていう事実はどうやったって消せない」
彼の手は、ぎゅっと握られ拳になり、なにかその中に入れていて、その感触を確かめているみたいに、ぎゅっぎゅっと何度か握り直された。
「親は自分の子を通して、自分の人生を肯定したい。そういう意識は、多かれ少なかれ、どこかに必ずある気がします」
「有馬さんも、ありますか?」
尋ねながら、私はちょっと別のことを考えていた。
彼の話し方が好きなのだ。普段あまり多く語る人ではないけれど、自分の意見を言う段になると、誤解の少ない言葉を選んで、はっきりと考えを伝えてくれる。
無造作な口ぶりに聞こえて、実は相手の立場や気持ちを慮った、すごく理性的な物言いができる人で、たとえ私と彼の主張が百八十度逆だったとしても、安心して耳を傾けていられる。
「俺は…」
有馬さんの声は、静かすぎて扇風機の羽音に紛れてしまいそうだ。
「俺と、律己は…」
じっとどこかを見つめる横顔。
男の人らしい指が、うなじを掻いた。髪の毛のこすれ合う音がした。
親指が加わり、"二"が"三"になった。
「有馬さんも、そんな感じでした?」
「俺は…」
彼が手よりも先の、どことも言えない場所に視線を落とした。だいぶためらってから、「わかりません」と小さく答える。
「でも、たとえば子供の…律己の手先が器用なのを知ったとき、あれの母親の血だと思いました。嬉しくなりましたし、誇らしいと思いました。そういう気持ちは、少なからず親ならあると思うんです」
「それはわかりますが、限度ってものが」
「もちろんです。先生のお母さんの、先生への関わり方は、俺もきっとやられたら傷つく。反面、身につまされます。子供が、親から産まれていて、なにかしら継承してるっていう事実はどうやったって消せない」
彼の手は、ぎゅっと握られ拳になり、なにかその中に入れていて、その感触を確かめているみたいに、ぎゅっぎゅっと何度か握り直された。
「親は自分の子を通して、自分の人生を肯定したい。そういう意識は、多かれ少なかれ、どこかに必ずある気がします」
「有馬さんも、ありますか?」
尋ねながら、私はちょっと別のことを考えていた。
彼の話し方が好きなのだ。普段あまり多く語る人ではないけれど、自分の意見を言う段になると、誤解の少ない言葉を選んで、はっきりと考えを伝えてくれる。
無造作な口ぶりに聞こえて、実は相手の立場や気持ちを慮った、すごく理性的な物言いができる人で、たとえ私と彼の主張が百八十度逆だったとしても、安心して耳を傾けていられる。
「俺は…」
有馬さんの声は、静かすぎて扇風機の羽音に紛れてしまいそうだ。
「俺と、律己は…」
じっとどこかを見つめる横顔。
男の人らしい指が、うなじを掻いた。髪の毛のこすれ合う音がした。