君が見せてくれた、私の世界
大学の最寄り駅から、想世架の家の最寄り駅まで向かうこの時間が。

俺にとっては、なによりも大切な時間のひとつになっている。


想世架との思い出のひとつ、ひとつが…かけがえのない大切なもの。



「あら、冷泉くん。いらっしゃい。」


「こんにちは。」



想世架の家に行くと、すぐにおばさんが笑顔で出迎えてくれる。


想世架がいるのは、2階の自分の部屋。

あそこから彼女が動くことは、ほとんどない。



「毎日、毎日ありがとう。
今お茶を持っていきますわ。」


「すみません。」



おばさんにそう返事を返して、俺は慣れた足取りで想世架の部屋に向かった。


ここにこうやって通うようになったのも、もう何日になるんだろうか。



「想世架。」


「……。」




コンコンとノックをしてから、返事がなくても部屋に入ると。


上半身をクッションに預けて、ただ窓の外を見つめ続ける想世架がいた。

開け放たれた窓からは、桜の花びらがひらひらと想世架の白いベッドシーツに花を咲かせていく。




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