君が見せてくれた、私の世界
「あー!
とーもーえー!!!」



その姿を見つけて、我先に駆け寄っていく姿を視界の隅でみつけた。


…お前は飼い主を待つ犬か。



「わっ…ちょっと、危ないでしょ?」


「えへへ〜!
巴に会いたかったんだもん!」


「はいはい。
…冷泉くん、まだかかりそうかしら。
3人でランチでも…って思ったのだけれど。」


「すまん。
俺、彼女のところ行くから。」


「…そう、分かったわ。
冷泉くんとランチができないのは残念だけど…彼女さんを優先してあげて。」


「悪い、明智。」



残念そうに、それでも笑って見送ってくれる明智に一言だけ告げると。


俺は、カバンに資料を詰め込んで大学を出て想世架の家に向かった。



「……そろそろ、満開か。」



大学の門までは、桜並木が続いている。

そろそろ、想世架を花見に連れてってやろう。


一番綺麗な時の桜を見せてやりたい。
想世架には、綺麗なものだけを見せたい。



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