マドンナリリーの花言葉

「結婚式は豪華にしような。そうそう、ディルク君とローゼ嬢も一緒にどうだい。なにせ君たちは俺の親族になるんだから。あわただしく結婚式だけをさせてしまったお詫びに、ドレスもこちらで準備するよ。豪華な合同結婚式としゃれこもうじゃないか」

「む、無理ですよっ」


慌てるローゼにクラウスは軽くウインクをする。


「どうせ君たちはついでだから気にすることはないよ。メインは俺たちの結婚式だ。なぁ」


平気な顔で人を振り回す王子様。
だけどパウラは、そんな彼に人生で三度目の恋をしたのだ。





それから二週間も経たないうちに、クラウス第二王子が公式に結婚の意思を示した。
それがかのパウラであるというから、世間は大騒ぎとなった。
詳しい年齢は明かされていないが、かなりの年上であると噂されていたし、囚われの期間、汚されたであろう女性が王家にふさわしいとは国民は思わなかったのだ。

しかし、クラウスがお披露目と称して彼女を民衆の前に出した時の反応は予想と違うものだった。ひとり子供を産んでいようが、何年も軟禁状態で捕らえられていようが、パウラの聖母を思わせる美しさと気品は衰えてはいない。

息を飲むほど美しい女性を民衆は歓迎し、悪い噂はあっという間に吹き飛んでしまったのだ。
第二王子の婚儀は半年後を予定していて、その時にクラウス王子はカぺルマン公爵位を賜る予定だ。


一方、ディルクとローゼも同じころに完成した屋敷へと移り、仲睦まじく慎ましい生活を始めた。

ローゼが第二王子妃であるパウラにそっくりだというところから、領民は最初戸惑っていたものの、何度も視察に訪れ、素直に感情を表現するローゼにじきに心を開き始める。

屋敷の使用人は、失敗の多い奥方を守るために仕事に精を出し、夫であるディルクは、毎日クレムラート家に通う忙しい生活ながら、必ず奥方と一緒に朝食を取り彼女の話に耳を傾けた。


「ほら、ディルク、見て! 薔薇が咲いたの。私がお世話したのよ?」


そして見事な庭園で笑う彼女へ、ディルクは、愛を込めたキスを贈った。



【Fin.】


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