マドンナリリーの花言葉


「ならば俺を助けてはくれないか。体が疼いて、おかしくなりそうだ」

「クラウスさま」

「たぎる思いを抑えきれない。全く媚薬というのは厄介だ。しかも恋する女が目の前にいて、我慢できるわけがないだろう」

「全く、……仕方ありませんわ」


そう言いつつ、パウラの胸からはつかえがとれていた。

何のことはない。認めてしまえばいい話だ。
誰にどう思われようと、王子の妻としてふさわしくなくても仕方ないのだ。

だってパウラは、クラウスに恋をしたのだから。
誰にも渡したくないと思うほど、彼のことが好きなのだから。
ならば心のままに、彼を愛するより他に生きる道などない。


「……優しくしてくださいませ」

「努力はする。だが薬のせいで保証はできない」

「そんな……あっ」


半ば野獣めいたぎらついた瞳で、クラウスはパウラを捕らえ、ベッドに押し倒した。


「飢えてるんだ。……君を見つけてからは一度も遊んでない。その上この媚薬では、……タガが外れても仕方ないだろ」


真っ赤になったまま、パウラが目をそらすと、荒い呼吸の合間に、ふっと笑う声が聞こえた。


「だが信じろ。……ちゃんと愛している」


目頭が熱くなるのは、どうしてだろう。
パウラはぼやけていく視界の中の、熱っぽい表情で微笑む彼を見つめ、ああ、と思い当たる。


(そうだわ、私……、こんな幸せな恋をするのは、初めてなんだわ)


別れ前提の恋じゃない。
届かない片恋でもない。

これは、永遠に続くラブストーリーだ。

パウラはゆっくり目を閉じて彼のキスを受け入れる。唇から媚薬交じりの息が入り込み、パウラの体にもかつてない甘い陶酔が押し寄せてくるのを感じた。





【Fin.】


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