マドンナリリーの花言葉
*
黒馬に乗って走り出し、三十分もしないうちに雨は激しく降り出した。頭を、肩を、激しい滴が濡らしていく。
稲光が空を割り、ローゼは「ひっ」と身をすくめた。
「どこかで休憩するか。しかし、戻るには来すぎたな」
怯える馬をなだめながら、ディルクが馬を止め、荷物の中から外套を出す。そして、ローゼにふわりと頭からかけた。
「あ、ありがとうございます。でもディルク様が」
「俺は平気だ。もう屋敷まで半時のところまで来ているし、このまま道沿いを走ろう」
「大丈夫でしょうか」
「休みたいのはやまやまだが、ちょうど街も村もない地点だ。雷の場合は木の下も危ないしな。君は濡れないようにちゃんと羽織っていなさい」
「でも」
ディルクの香りがする外套に、抱き締められているような感覚がしてドキドキする。しかし、このままではディルクがずぶぬれになって風邪をひいてしまう。
「あの、この外套は大きいですし、ディルク様が着てください。私は普通にしていてもディルク様のおかげで雨はしのげますし」
彼の体は大きく、現在風は背中から吹いている。上からくる雨こそかかるが、横風がもたらす雨はディルクが盾になってくれているのだ。
「……女性を差し置いてはそんなことはできないよ。いいから、君が濡れなければそれでいい」
「でも、元々馬に乗せてもらうのだって私のわがままなのに」
「こうして話している時間でついてしまうよ。いいから黙ってじっとしていなさい」
これ以上は聞く気がないとばかりにディルクは馬を走らせ、ローゼは言葉をなくして俯く。
黒馬に乗って走り出し、三十分もしないうちに雨は激しく降り出した。頭を、肩を、激しい滴が濡らしていく。
稲光が空を割り、ローゼは「ひっ」と身をすくめた。
「どこかで休憩するか。しかし、戻るには来すぎたな」
怯える馬をなだめながら、ディルクが馬を止め、荷物の中から外套を出す。そして、ローゼにふわりと頭からかけた。
「あ、ありがとうございます。でもディルク様が」
「俺は平気だ。もう屋敷まで半時のところまで来ているし、このまま道沿いを走ろう」
「大丈夫でしょうか」
「休みたいのはやまやまだが、ちょうど街も村もない地点だ。雷の場合は木の下も危ないしな。君は濡れないようにちゃんと羽織っていなさい」
「でも」
ディルクの香りがする外套に、抱き締められているような感覚がしてドキドキする。しかし、このままではディルクがずぶぬれになって風邪をひいてしまう。
「あの、この外套は大きいですし、ディルク様が着てください。私は普通にしていてもディルク様のおかげで雨はしのげますし」
彼の体は大きく、現在風は背中から吹いている。上からくる雨こそかかるが、横風がもたらす雨はディルクが盾になってくれているのだ。
「……女性を差し置いてはそんなことはできないよ。いいから、君が濡れなければそれでいい」
「でも、元々馬に乗せてもらうのだって私のわがままなのに」
「こうして話している時間でついてしまうよ。いいから黙ってじっとしていなさい」
これ以上は聞く気がないとばかりにディルクは馬を走らせ、ローゼは言葉をなくして俯く。