マドンナリリーの花言葉


「へぇ。ディルク君にはそんな過去が……」


ギュンターは興味深げにフリードの明かした事実に頷く。


「先々代……俺の祖父とドーレ男爵の馬車の衝突は本当に事故です。それに祖父にも人目につかないように移動していたという過失もある。ドーレ男爵家だけが爵位剥奪になるのはおかしな話なのです。しかし当時伯爵夫人であった祖母は、社交的で影響力の強い人物でして」

「国王様に爵位剥奪を進言したというわけだね。で、君は優秀なディルク君を従者程度の扱いにしているのが不満だということか」

「そうです」


流石頭が切れると噂のギュンターだ。フリードは話が早いと喜んで前のめりになったが、「そうだねぇ」と難しい顔をする。


「この国の爵位はほぼ世襲化されているからね。一度その枠組みから外れてしまうと男爵位と言えども簡単ではないね。戦争でも起こって分かりやすく功績をあげられれば別だけど。今は平和なものだしね」

「ディルクは博識です。それに戦わせたとしても五人分の働きはひとりでできます」

「優秀なのはなんとなく見ていれば分かるよ。体つきもいいし、視線が常に動いている。随所に気を回している証拠だ。いっそ王家に仕えさせればすぐ出世するんじゃないかと思うよ。そういう口なら探してあげられると思う。しかし見たところ、彼には君の手元を離れる気はないんじゃないかな」


フリードは思わず息を飲む。自身も、有能な相棒を手放す気にはなれない。
口ごもると、ギュンターはクスリと笑ってフリードのグラスにブランデーをつぎたす。
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