イジワル上司の甘い毒牙
「いつか絶対、この口から、俺のことが好きだって言わせるから」
「はあ……」
色気もない、呆気に取られた声で返事をすると、手首を掴まれて、赤くなった顔を暴かれてしまった。
「明日も休みだし、泊まっていく?」
「え、あ、日高さんがいいって言うなら」
今の会話の流れで、どうして突然そんなことを言い出すんだろう、と思って首を捻っていると、そのまま優しく手首をなぞって、彼の指先と私の指先が絡まった。
「……ちゃんと意味わかってる?」
「え?だから、泊ま……」
そこまで言って、私は黙り込んでしまった。
明日も休みだし、多少の夜更かしをしても問題ないけど、泊まっていく?――つまりは、そういう意味だ。
「わ、私、帰……」
「また歩くの?」
歩き疲れてつりそうになる足を震わせて、私は一歩、また一歩と後退りをした。
最初から最後まで、私は彼に翻弄されていただけだった。この男は、こうなることを予想していて、用意周到に、その時が来るのを虎視眈々と狙っていた。
再会したあの日から、私はただ彼の張り巡らせた糸の中を、意味もなくもがいていただけなのだ。
「い、意地悪っ……!」
fin.

