イジワル上司の甘い毒牙
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「日高さん、ありがとうございました」


重役や取り引き先の方がいなくなった会議室で、私は日高さんに深々と頭を下げた。

プレゼンのために移動させた長机や椅子を復元させるため、机を持ち上げていた日高さんは眉根を寄せて私を見返した。


「……熱でも、あるのかな?」
「は?」


日高さんは心配そうな目をして私の顔を覗き込んでくる。その表情は困惑と驚きに満ちていた。

なるほど、普段から人を褒めたり労ったりしない、とにかく職場において他人に無関心な私が彼に頭を下げるなんて、天変地異の前触れだと言いたいのか。

一瞬頭に来たけれど、今彼に対して怒るのはどう考えても筋違いというか、八つ当たりにしかならない。

一度深呼吸をして、私はもう一度頭を下げた。

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