唯少女論
「唯理さん? どうしたんですか?」



「……ん? ううん。何でもないよ」



アタシがそう言うと彼女は心配そうにアタシの顔をのぞき込む。



「ほんとうですか? 何かいつもより顔色が白いような」



「そう? 部活辞めてから色白目指してるからかな」



「あー、唯理って最近日焼け止め塗りまくってるよね。美白?」



「うん。あの話、モデルやることにしたから」



「え!? モデルですか!?」



「そう。シャルの知り合いに頼まれて」



「すごいです! 唯理さん美人さんだから絶対似合います!」



「そんなことないよ。まだこれからだから。髪も伸ばさないとだし、アタシで務まるのかも不安だけどね」



「とりあえずポートレートの練習台だから心配することもないっしょ。私じゃ胸が邪魔らしいからさ」



嫌味っぽく両手で胸を強調するシャルにアタシ達は冷たい視線を送ってさっさとゲートから中に入った。



「ちょっ! 待ちなさいよ! 唯理! 私のチケット渡して!」



もうこのまま置き去りにしてやろうかと思っていると、握りしめたチケットをわもかちゃんがそっと私の手から抜き去る。



「唯理さん、今日は三人で楽しみましょう?」



どうしてだろう。



この笑顔にアタシは勝てる気がしない。


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