繋がる〜月の石の奇跡〜
一章
いつもと同じ朝なのに、鳥の鳴き声がはっきりと聞こえて、太陽の光がいつもより眩しく感じた。

目を開けたら素敵な世界が広がっているようなそんな気がした。

目を開けて確かめてみたいと思えたのは何日ぶりのことだろう。

変わらぬ現実だけが目の前でどっしり構えて、その壁を乗り越える術がまだ見つからないことは分かりきっていた。

だから小さな子供みたいにひたすら泣き続けてしまったのだと思う。

そんな状態が約1ヶ月経とうとしていた今日、いつもは涙で濡れている枕が湿ってすらいなかった。

ついに体中の涙を出し切ってしまったというサインなのか、「私はもう大丈夫だよ」というお告げなのか。

どちらも腑に落ちないとぼんやり思いながら、吸い込まれるようにして、窓からこぼれ出る朝日に向かっていた。
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