繋がる〜月の石の奇跡〜
「私、このままでいいの?」
鏡の前にいる女性に問いかけてみる。

そして、フッと棚の上の写真立てに目をやる。

写真に写る自分の顔があまりにも幸せそうで、ずっとは見ていられずに、えみは徐々に目を細めた。

目頭に何かを感じ始めたから、ぱっと目をつぶった。

だけど頬には何も感じない。

「今日は行ってみるか。」
今度は力強く、少し大きめの声で言ってみる。

今日は月曜日、講義が何限からなのかも忘れてしまった。

充電の切れたケータイを充電器にセットする。

今日は2限から機械力学の授業が入っていた。

2限は10:30からで、今から準備しても十分間に合う。

「よし。」
と、もう迷いはないという意気込みでえみは声を出した。

ケータイの電源を入れると、次々とメールを受信をしていく。

大学の唯一の女友達のあずさから何通もメールが届いていた。

それから、ジャンクメールとお母さん。
ケータイの画面をどんどんスクロールさせてながら、胸の奥がずしりと苦しくなっていくのを感じた。

光輝からのメールはなかった。

分かりきっていたことのはずなのに、がっかりしていることが虚しかった。

だけど、ケータイの電源をずっと入れなかったのは、光輝から連絡があると少しの期待を信じていたかったからだ。

連絡はきているけど、電源が切れていたから気づけないだけだと思いたかったからだ。

その少しの望みを力に1ヶ月間生きてきたと言っても過言ではないかもしれない。
でも、その望みももう無くなってしまった。

「本当に終わったんだ。」

以前あずさが持ってきてくれたエネルギーバーをカリカリと齧りながらえみは一人つぶやいた。

思ったよりも食べ物が喉をすんなり通って、4本あったエネルギーバーを一気にたいらげる。

久しぶりに髪を整えて、メイクをした。

栄養不足のせいかファンデーションののりがイマイチだ。
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