会長代行、貴方の心を全部わたしにください
受付でアポ取りしていることを告げると、最上階の応接室に通された。

席に着いて数分、入ってきた嶋津社長は開口一番、「お身体の具合は如何ですか」と訊ねた。

「お時間の調整をいただきありがとうございます。お陰様で何とか落ち着きました」

「それは良かった。だが貴方が体調不良を押してまで出向いて来られなくても」

嶋津社長は苦笑いを浮かべて、会長代行の顔色を窺いながら言う。

「嶋津社長、御社は我が社にとって創業以来の大事なお得意様です。会長が体調不良で何かとご迷惑をお掛けしている時に、代行が能能と休んでなどいられません」

「それは………」

会長代行は言葉を選んで、真摯に答える。

「それに、本日は嶋津社長から直々に命を受けての案件、他の者を寄越すなど申し訳なくて」

「お若いのにしっかりしておられる。会長はご安心でしょうね。貴方のような後継者を持たれて」
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