会長代行、貴方の心を全部わたしにください
その手腕と語学堪能など様々な資格を買われ、編集部に引き抜かれたこと。

鬼編集と噂されるベテラン編集員の後を受け、数人の大御所作家を担当していたこと。

編集部着任以来、担当作家の原稿は締切日の数日前にはきっちり間に合わせ、1度も落とさなかったこと。

ミステリー作家西村嘉行の原稿は筆談で、原稿をパソコンに打ち込んで毎回、ミスが1つもなかったこと。

出版社を退職する時、後輩には各々の能力や性格に合わせたマニュアルを作成し、業務引き継ぎをしたこと。

……など、色々な武勇伝に驚かされた。

書類への調印とサインを終え、会長代行と嶋津社長は堅く握手を交わした。

「熱がおありのようですね」

「微熱です」

嶋津社長の言葉にハッとして、会長代行を横目で見る。

「どうか呉々も、お身体を大事に」
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