会長代行、貴方の心を全部わたしにください
嶋津ゼネレーションの応接室を出て、エレベーターの中、会長代行は「まだまだだな」と呟いた。

「え?」

「先方に、体調不良を心配されるなど……まだまだだと言ったんだ」

「熱があられること、気づきませんでした」

「気にするな。この後は、下請け回りだったな」

「休まれなくて大丈夫ですか? 運転替わりましょうか?」

「気遣いは無用だ。それに運転交替は遠慮する」

そんなに警戒しなくても……と「私が運転しますから、その間」言いかけた私に、会長代行は「無理」と冷たく言い放った。

「着任間もなく、会長の専属運転手の運転で出かけたが、10分で限界だった」

「──え!?」

「ゲロまみれになりたくなければ、余計なことを考えるな」

会長代行は助手席の私をちらと見て、微かに口角を上げた。
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