会長代行、貴方の心を全部わたしにください
下請け会社を幾つか回り、本社に戻る頃には、すっかり暗くなっていた。

会長代行は本社に着くと、玄関前に車を停め「お疲れさま、定時を過ぎてすまない」と私を降ろし、駐車場に向かった。

玄関前で会長代行を待っていると、1台の車が私の前に停まった。

バタンと、荒々しくドアを開けて車を降りてきたのは、詩乃様だった。

「あの後、ずっと外回りだったの?」

「……はい」

「気が利かないわね。少しくらい早めに切り上げて休ませてやってもいいでしょ?」

「私もそう申し上げましたけど、会長代行が……」

詩乃様は腕組みをし、険しい表情で私を見下ろしている。

「貴女のスケジュール調整が甘いから、由樹が無理をするのよ」

「でも……」

「それに貴女、由樹に運転させているの? 貴女、何様なの? 会長代行に運転させて、自分は能能と助手席に座って?」
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