会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「何故だ。嫌がらせでも?」


会長代行は書類確認していた手を止め、私を見つめて訊ねた。


冷静で穏やかな吸い込まれるような瞳にじっと見つめられ、私は全てを包み隠さず話した。


「委細は理解した。だが秘書を解任する気はない」


会長代行は顔色1つ変えなかった。


「君たちに1つ、勧告したい」


その翌日、会長代行は出社するなり、静かに口を開いた。


「愚痴を言う暇、文句を言う暇、人を誹謗中傷する暇があるなら、自分磨きをしたまえ。自分磨きとは外見磨きではなく、自分自身の内面磨きだ」


誰も何も言えなかった。


「社員同士のいがみ合いは一切認めない。不満があるなら、俺に話すように。出来うる限りの対応を考える。以上だ」


その一喝を機に誹謗中傷も嫌がらせも、一切無くなった。


会長代行はその後も、事あるごとに秘書室の様子を訊ねる。


「芹沢、訂正を頼む」


出社間もなく、会長代行から書類を手渡された。
< 19 / 115 >

この作品をシェア

pagetop