会長代行、貴方の心を全部わたしにください
私は急いで書類を確かめた。


昨日、仕上げた書類に付箋紙が貼られ赤ペンで間違いを指摘し、付箋紙に「見直しを怠らないように」とメモ書きされていた。


私だって何度も見直しをして完璧だと確認して、会長会代行に提出した。


なのに、赤ペンで幾つも記しが付いている。


カーッと顔が火照り、恥ずかしくて堪らなかった。


急いで訂正し、会長代行に書類を手渡すと、会長代行は「ご苦労」と呟き、すぐさま書類を確認した。


「問題ない。ーー芹沢、君には迅速は望まない。丁寧にミスなく仕上げれば、良しとする」


会長代行の机の上と、会長代行の手元を見る。


「あの……会長代行自ら、こんなに書類作成を?」


私が驚いて訊ねると、会長代行は「そうだが」と無感情に答えた。


会長代行が席に着きパソコンを開いて、まだ1時間ほどしか経っていない。
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