会長代行、貴方の心を全部わたしにください
会長代行の声が私を優しく包み、涙が止まらなかった。


「仕事ができないことを卑下する必要はない。芹沢、君は自信を持っていい。わかったな」


「……はい」


「顔、洗ってこい。昼から重役会議だろ」


会長代行はそう言いながら、スッとハンカチを差し出した。


「ありがとうございます」


「芹沢、仕事は俺がみっちり鍛える」


ハンカチを受け取る私に、会長代行は小さく呟き、書類に目を落とした。


化粧室でメイクを直し、会長代行の元に戻る途中、女子社員たちの話し声が聞こえてきた。


「ねえ、会長代行。今日は社内にいらっしゃるのかしら?」


「昼から重役会議だから、いらっしゃるのではないかしら?」


「お得意先や下請け回り、各部署にも顔を出して、パソコン教室の講師もしていて、プライベートあるのかしら」
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