会長代行、貴方の心を全部わたしにください
私は急いで会長代行の後を追った。


「びっくりした!」


「やっぱり、爽やかね~」


そんな声が聞こえた。


秘書室を抜け、会長代行の元に向かう。


「芹沢、コピーは人数分済ませてある。書類を閉じて会議室に並べ、会議室のプロジェクターをセットしてきてくれないか」


「はい、承知……」


「それから、あの手の噂はどれもいい加減なものしかない」


会長代行は私の返事を遮り、無感情な声で呟いた。


「あの……」


「出版社の女性は後輩だ。彼女には婚約者がいる」


「……会長代行?」


会長代行は作業する手を止めずに話す。


「恋愛感情と呼べるものが、1時期おぼろげにはあった。……彼女は親の薦める縁談で先々月、婚約した」


淡々とした冷たい声に、私の手は微かに震えた。


「何故……私に……観ていらっしゃったんですか?」
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