会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「総代室から戻る途中、会話が聞こえた。問い詰められて震えていた。知りたかったのだろう?」


私が答えられず俯いていると、会長代行は静かに話し始める。


「……彼女の縁談前、ご両親に呼び出され直々にお会いし、付き合いを認めない旨、頭を下げられた。いつ倒れて寝たきりになるかもわからない男と、大事な娘の交際など許可できないと。ご両親が反対するのは当然だろ」


「そんな……彼女は納得したんですか」


「婚約した、それが彼女の答えだろ。結婚を前提に付き合いをしていたわけではない。……深い仲になる前に破局したのは、互いに幸いだったと思っている」


「あの……本気で言ってるんですか?」


会長代行の無表情な顔や無感情な声が、何かを訴えている気がして、私は身を乗り出していた。


「君と議論をする気はない。会議の準備に集中したい」


会長代行は手を止め、私を見上げ、凍りついた瞳を向けた。
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