会長代行、貴方の心を全部わたしにください
食事を済ませ、食器を洗い風呂に入り、早々に自室に入る。

パソコンを開こうとして、たまにはゆっくりしたいとベッドに横になったが、期限付きの原稿が気になり起き上がった。

ゆっくりしているのは性分に合わない……と改めて思う。

ガウンを肩に掛け、サイドテーブルを引く。

パソコンを開いて「空シリーズ」の原稿を打つ。

女流作家、沢山江梨子とのコラボ企画は月刊誌の目玉であり、黒田女史を始め編集長も力を入れている。

沢山江梨子の担当編集者、相田さんからコラボが始まって以来、「沢山先生も意識しているのか原稿の遅れがなくなった」と聞いてホッとしている。

沢山江梨子のキツイ香水の匂いが甦り、喉元まで吐き気がこみ上げ、慌てて胸を擦った。

沢山江梨子は小説の中だけでしか恋愛できない女性だと、担当の相田さんから聞いてはいるが、小説の中のリアルな描写は実体験があってこそだと、俺は思う。
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