会長代行、貴方の心を全部わたしにください
「それはそうだろ。俺がこんな風なのをずっと見てきた姉なんだから」

「お姉さまだから、そんな感情ではなくて、もっと──あの詩乃様はブラコン……いえ、会長代行のことが……」

「芹沢、君が立ち入っていい話ではない。……それより何故、詩乃に知らせた?」

会長代行は抑揚なく、感情を押し殺したような顔をしていた。

「会長代行の発作があまりにも苦しそうで、お薬が効かないなんて思わなくて……どうすればいいのか、わからなかったので……気がついたら詩乃様に」

「もういい、わかった」

会長代行はフゥーと深い溜め息をつき、呟いた。

「詩乃には極力、知らせないでもらいたい。仕事の邪魔はしたくないし、心配をかけたくない」

「あの……よろしいんですか」

「返事は?」

会長代行の声は辛そうで、冷たかった。

「……承知しました」
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