【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「あと、一緒に帰るつもりだったが……うん、今日は一人で帰ることにするよ。まだそう暗くもなってないし大丈夫だろう。だいたい、僕の家は君たちとは反対方向だからね」
「で、月城クンはいったいどうするんだい?」と言いながら鬼龍院くんがセレナちゃんの方に視線を向ける。
名前を呼ばれたセレナちゃんの身体がビクリと震えた。
その顔は、どこか浮かない顔で……
「い、言われなくても帰るわよ。……まあ、柚月さんの顔色がちょっと良くなったのは、本当に嬉しく思うの。嬉しいのだけれど」
少し考える表情をしたと思ったら、セレナちゃんはさらに浮かない顔になってしまった。
「……目の前であんな告白を見させられて、抱き締めあう二人を見せられて、わたしはいったい、どうすれば」
悔しそうに、拳を握る。
そうだ、セレナちゃんは彼方のことが好きで、それで私と彼方を引き離そうとしてて、
でも今彼方は、ハッキリと私のことを好きだって言って……
「セ、セレナちゃっ」
「……わたし、ちょっと一人で考えたいことがあるの。だから今日のところはこれで失礼するわ。またね柚月さん」
そこにいつもの元気はなく、トボトボとした足取りで鬼龍院くんとともに教室を出ていったのだった。