【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「……ん、あり、がとう。ちょっと落ち着いた」
ずびっと鼻を鳴らしながら、私は彼方から体を離す。
私が泣き止んだ頃には、もう夕日が沈もうとしている時間になっていた。
「本当に? もう、大丈夫じゃない時は無理せずそう言ってね?」
「……うんっ」
「……結局、最後の最後に近衛クンの本心を聞き出せたのは一色クンだったわけか」
鬼龍院くんが、独り言のように呟く。
「だがまあ、これでやっと近衛クンの辛そうな顔を見ずにすみそうだな!」
いつもの笑顔で、私のことを見つめてくれる。
「鬼龍院くん……いろいろと、心配かけて、ごめんなさいっ」
「……鬼龍院、いろいろとその……ありがとう。あんたのおかげで、一歩踏み出せた気がする」
「謝らなくてもいいし礼もいらない。僕は僕が思ったことをそのまま言ってきただけだからな。さ、近衛クンも疲れているだろうしおまけに明日は文化祭だ」
「それに、まだ多少は混乱したままだろう? まずは一刻も早く心の休息をとるべきだ」と、まだ私の心配をしてくれる鬼龍院くんに頭が上がらない。