【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「あなたこそ、その人を馬鹿にしたような喋り方はやめた方がいいんじゃない?」
「これは君にだけだ。僕は君のことを馬鹿にしているからな!」
「あなたはわたしの腹をたたせる天才ね。褒めてあげるわ」
「事実、君は僕に勝ったことがないだろう?」
勝ったことがない。
それは事実だった。
勉強もピアノも運動も、じゃんけん、ババ抜き、神経衰弱に七並べ……鬼龍院司に勝るものなんて、一つもなかった。
「むしろそれは、あなたが全て一番を取るのが悪いんだわ!!」
「それだけの努力をしているからな。……だがまあこれから大人になるにつれ、努力だけじゃ敵わない相手なんて山ほど出てくるんだろうが」
少し自信なさげな表情の彼を見るのは、どこか変な気分になる。
「……なんでそんなに一番にこだわるの? それほど努力して、なんの意味があるの?」
「意味?」
鬼龍院司は、ふむと考える仕草を見せた後、
「意味なんて、考えたことなかったな」
なんて、呟いたのだ。